当番弁護をしてきました。
今月はとにかく「時は金なり」、1時間でも時間が惜しいという状況でしたので、
事務所から遠い警察署にあたった場合には、石原弁護士に引き取ってもらおうと思っていましたが、
事務所から近い警察署だったので、私が行くことにしました。
事件の概要は、
「被疑者(以下「彼女」と言います。)は外国人。窃盗(万引き)。日本語不可。要通訳事件。」
弁護士会が通訳を手配してくれていたので、早速、通訳さんと日時調整をした結果、
夕方に接見をすることになりました。
私と通訳さんが接見場所に行くと、
「すでに他の弁護士が接見しているので、しばらくお待ちください。」とのこと。
弁護士が接見に入ってからすでに30分近く経っているということでした。
せっかく時間を作って来たのに、まさかのダブルブッキングかよ!と思いましたが、
彼女の逮捕を知った家族の誰かが弁護士を頼んだのかなと思い、
通訳さんと雑談をしながら待っていました。
1時間近く待たされた結果、弁護士らしき人物(かなり年輩)が接見を終え、
彼女への差し入れの手続をしているようでした。
その際に、「名刺」というワードが聞こえたので、
おそらくこの人が弁護人に就いたのだろうな~、と思いました。
そこで、私の番になったとき、彼女に対し、
「さっきまで他の弁護士と面会してたよね?誰が弁護士呼んだの?その弁護士に依頼したの?」
と聞いたところ、案の定、
「弁護士は家族が呼んだ。よくわからなかったがさきほど面会した弁護士に依頼をした。指印も押した。」とのことでした。
ただ、「私は起訴されるのでしょうか?」、「私の意見をいろいろ聞きたい」、
と言ったとたんに泣き出しましたので、通訳を交えながら、話を聞いたところ、
すでに被害品はすべて警察に押収されており、被害金額も少額だったので、
被害者との示談は十分可能であり、20日間の勾留期間を待たず、早期の身柄解放も十分期待できるという印象でした。
そこで、私から彼女に対し、被害者との示談意思を確認したうえで、
「被害者との示談について、さきほどの弁護士から説明を受けてないですか?」と聞いたところ、
「示談については全く説明を受けていない。とにかく20日間勾留が続いた結果、起訴される可能性がある。
としか説明を受けてない。何をしたら良いのか分からなくなった。怖い。」とのことでした。
彼女の依頼を受けた弁護士は、
1時間30分も彼女と接見をしていたのに、なぜ示談について一言も話さなかったのでしょうか?
彼女は何度も「私は起訴されるのでしょうか?」と私に尋ねていました。
当然、さきほどの弁護士にも同様の質問をしていたはずです。
この状況で弁護人として説明しなければならないのは、示談についてだと思うのですが、
1時間30分も何を聞いていたのでしょうか?
彼女の不安を解消する努力をしていたのでしょうか?
その弁護士は、しっかり報酬を〇万円取るそうで、「そんな報酬を本当に支払えるの?」と言うと、
彼女はまた泣き出してしまいましたが。
私は彼女に対し、「一日も早くここから出たいのであれば、あなたが依頼した弁護士に対し、
明日にでも接見依頼の連絡をしなさい。接見に来た弁護士に被害者との示談を依頼しなさい。」
とアドバイスをしました。
ようやく彼女も泣き止んで多少落ち着いてきたので、
「とにかくあなたが依頼した弁護士を使って示談をしなさい。」とアドバイスをしました。
接見後はやりきれない気持ちでした。
「私が先に彼女と接見していたらどうなったかな。」、
「夕方になってしまったが、もっと早く当番弁護に行けたらどうなったかな。」と。
いろいろ思うところはありますが、あとは彼女の依頼を受けた弁護士に頑張ってもらうしか無いですね。
弁護士 高橋 裕