民法の相続分野の見直しに関する中間試案が発表されました(平成28年6月22日付け神奈川新聞)。
神奈川新聞の記事によると、中間試案のポイントとしては、
①結婚して一定期間(20年~30年)過ぎた場合、遺産分割で配偶者の
法定相続分を3分の2に引き上げる。
②亡くなった夫が遺言で自宅を第三者に贈与しても、妻に住み続ける権利
(「居住権」)を与える。
③現行法では相続の対象にならない人でも、看病や介護をすれば、
相続人に金銭を請求できる。
④自筆で作成する遺言の形式を緩和
となっています(平成28年6月22日付け神奈川新聞)。
これら中間試案が実際に立法化するかどうかはまだ分かりませんが、
上記中間試案③「現行法では相続の対象にならない人でも、看病や介護をすれば、相続人に金銭を請求できる」点については、
このままでは相続人以外の者と相続人との間の新たなトラブルを招くおそれがあるのでは?と思っています。
法務省のホームページにある中間試案のたたき台も読みましたが、
少なくとも看病や介護をしたからといって直ちに金銭請求ができるわけではなさそうです。
ただし、中間試案のたたき台には、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」とするのみで、
具体的にどのような(どの程度の)看病や介護をすれば、相続人に金銭を請求できるのかについては
はっきりと定められていないため、
結局は諸般の事情を総合考慮したうえでのケースバイケースの判断とならざるを得ません。
そうすると、現行法では相続人とはならない子の配偶者から相続人に対し、
単に「看病をした」、「介護をした」ことを理由に、
多額の金銭要求を行うケースが頻発するおそれがあります。
中間試案のたたき台にある「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」の
具体的内容を明確にしておくことが、
相続人以外の者と相続人との間の新たなトラブルの回避につながると思います。
弁護士 高橋 裕